家の売却に関わる法律の必須知識を徹底解説

家を売却するときには、いろいろな法律がかかわります。
たとえば、家を売るとき、具体的にいつ家の所有権が相手に移転するのか、所有権移転を他の人に主張できるようになるのはいつの時点なのかなどが問題になりますが、これらは民法に規定されています。

また、隣地との境界についてずれや認識違いがある場合の対処方法や時効取得の問題、自宅が袋地で通行権を利用している場合や地役権が設定されている場合の問題もあります。
さらに、家を売ったら所有権移転登記も必要ですが、登記をしないとどのような問題があるのかについても押さえておきましょう。宅地建物取引業法についての最低限の知識や都市計画法や建築基準法など、建物の建築制限とそれによる売買への影響についても押さえておくと役立ちます。
そこで今回は、家を売る際に知っておきたい法律知識について、解説します。

1.家の売買にかかわる法律~民法、不動産登記法、宅地建物取引業法~

家を売る際には、たくさんの法律が関わってきますが、その中でももっとも重要な法律が民法です。
民法には、家を売る場合の所有権の移転時期や、所有権が移転したことを他人に主張するための要件など、重要なことがたくさん規定されています。
そこで、まずは民法に規定されている家の売買にまつわる規定について、見てみましょう。

(1)家の所有権はいつ移転するの?

A、所有権移転は「売買契約が成立したとき」

家を売る場合、家の所有権がいつ相手に移転するのかが問題です。つまり、家を売ったときに、家が正式に相手のものになるのはいつなのか、という問題です。
たとえば、「家を売ります」、とこちらが言ったときなのか、相手がそれに答えて「買います」と言ったときなのか、売買代金が決まったときなのか、契約書を正式に作成したときなのか、登記の書き換えが終わったときなのか、などが問題です。
このようなことは当たり前だと思って深く考えたことがないかもしれませんが、所有権がいつ移転するかは意外と重要です。
たとえば所有権が移転する前なら、売主は買主に売却するのをやめて、他の人に売却することもできます。

法律では、原則、家の所有権は、「売買契約が成立したとき」に移転するとされています。
よって、売主が「売ります」と言った段階ではまだ所有権は移転しません。買い主が「買います」と言って、さらに具体的な売買条件まで決まったところで、所有権が移転すると考えられます。

もっとも、特約で、売買代金支払いと所有権移転登記・引渡しを同時に行い、そのときに所有権が移転するとの契約がほとんどです。

以下の(1)B・Cの民法の説明は、原則による場合です。

B、契約書作成と所有権移転時期

所有権が移転するのは売買契約が成立したときだとすると、契約書の作成時期とはどのような関係にあるのかが問題です。契約書を作成しないと売買契約は成立しないのか、それとも口頭でも契約自体は成立するのでしょうか?
この点、売買契約は、口頭でも成立します。
よって、契約が成立して所有権が移転するために、契約書の作成は不要です。売り主と買い主が話し合って、家を売買することと売買代金などの条件が決まったら、口頭でも契約が成立してその時点で家の所有権が買い主に移ります。
それでは、なぜわざわざ契約書を作るのかと疑問に感じることがあるでしょう。

契約書を作成するのは、後のトラブルを避けるためと、トラブルが起こった場合に証拠にするためです。

もし契約書を作成しなければ、家を売買した証拠が残らないので、後に買い主が「そんな約束はしていない」と言い出して、代金を支払わないかもしれません。
売り主が「売ると言っていない」「売るとは言ったが、もっと高額な代金だった」などと言い出すおそれもあります。
契約書があったらこのような勝手なことは言えませんし、契約書を作成していたら、万が一上記のようなトラブルが起こっても、契約書が証拠となるので争いを解決しやすいです。

さらに、契約書がないと売買契約を証明できないので、不動産の所有権移転登記ができないという問題もあります。
そこで、契約書は、売買契約の成立のためではなく売買契約が成立したことの証拠として利用するために作成するのです。
そして、証拠としての効力を高めるため、契約書には実印を使って押印します。法律上、契約書に実印で押印しないといけないという定めはないので、認印でも有効な契約書にはなるのですが、後々のトラブルを防止するためという目的を確実に果たすため、不動産売買契約書には実印で押印する必要があります。

C、不動産登記と所有権移転時期

不動産の所有権移転時期が売買契約時だとすると、不動産登記手続きとの関係がどうなるのかも疑問に思われる方がいるでしょう。
家を売ったら、相手に家の所有名義を書き換えます。売買契約によって所有権が移るなら、家の名義を書き換えなくても、家の所有権は相手のものになるのでしょうか?
もしそうだとすると、不動産の登記名義を書き換える意味が無いようにも思えます。

この点、原則として、家の所有権は、不動産登記名義とは無関係に相手に移転します。口頭であっても家を売買することについて売り主と買い主が合意すれば、その時点で家の所有権は買い主に移転します。このとき、家の所有名義を相手に移す必要はありません。
不動産の登記は、自分のところに所有権があることを他人に主張するための要件であり、所有権を得るための要件ではないからです。
つまり、家の所有権を取得するために家の名義を書き換えてもらう必要はないと言うことになります。

D、登記を書き換える意味は?

家の所有権が買い主に移転することと不動産登記が無関係だとすると、家を売ったときにわざわざ不動産名義を書き換える意味がないように思えます。
所有権移転登記は、家の売却後もずっとしなくて良いものなのでしょうか?

実際、家などの不動産を売買しても、必ずしも所有権移転登記をする必要はありません。
登記をせずに前の所有者の名義で放置していたとしても、何らの罰則はありません。

ただ、所有権移転登記をしないと、その不動産が自分のものであることを他人に主張できないという問題があります。
家を買った場合、家は当然自分のものになりますし、そのことを売主に対して主張することは当然できます。
しかし、所有権移転登記をしない限り、そのことを売主以外の第三者に主張することはできません。
このことは、家の二重譲渡が起こった場合などに重大な問題になります。その問題については、次項で詳しくご説明します。

E、二重に売買した場合にはどうなるの?

家の二重譲渡とは、どのようなことなのでしょうか?
これは、家の売主が、買い主とは別の人にも二重に家を売却してしまうことです。
この場合、買い主が2人いることになりますが、家は1つしかないので、当然どちらか一方の買い主しか家の所有者となることができません。
この場合、どのような基準で2人の買い主の優先順位を決定すべきかが問題になります。
先ほどからの所有権移転時期の議論からすると、先に家の売買契約をした側が優先しそうな気がしますが、本当にそれでよいのでしょうか?

実は、そうではありません。ここで重要になるのが、所有権移転登記です。
民法では、所有権の移転時期は契約成立時としていますが、所有権を他人に主張するには不動産登記をしなければならないと定められています(民法177条)。そこで、家の二重譲渡が行われた場合、先に他方の買い主よりも所有権移転登記を備えた方が、保護されることになります。
つまり、先に不動産登記をしてしまった側が家の所有者になることができるということです。
たとえば、家がAさんとBさんの2人に売られた場合、Aさんが先に契約書を作成していたとしても、Bさんが先に所有権移転登記をしてしまったら、Bさんが家の正式な所有者になることができます。
このようなことからすると、家の売買をしたときには、早めに所有権移転登記をすることが重要であることがわかります。
特に、家の売買を個人同士で行った場合、所有権移転登記をせずに放置してしまうケースもありますが、そのような不安定な状態で放っておくと危険があるので、家の売買契約が行われたら、すぐに不動産登記をしましょう。

(2)契約が無効になることはある?

次に、家の売買契約が無効になることがあるのかについて、考えてみましょう。
家を売ることと買うことについてお互いに了承ができて、家の売買契約が成立したとしても、その契約が取り消されたり無効になったりしてしまうことがあります。

たとえば、家の売買契約の当事者が未成年の場合、法定代理人(通常は親権者)が同意しない限り、取消の対象になってしまいます(民法4条1項、2項)。そこで、未成年に家を売ったとしても、親が取消をすると家の売却はなかったことになります。

また、家を売却した人が、相手をだまして売買契約を結ばせた場合には、詐欺取消によって相手は売買契約を取り消すことができます(民法96条1項)。
この場合も、家の売買契約ははじめからなかったことになるので、無効になります。

さらに、売主がだましていなくても、買い主が錯誤に陥っていた場合には、家の売買契約が無効になってしまうことがあります(民法95条)。錯誤とは、いわゆる「勘違い」のことです。
ただ、売買契約が無効になるほどの勘違いは、重要な部分についての勘違いである必要があり、些細なものの場合には錯誤無効にはなりません。
また、買い主が錯誤に陥っていたとしても、そのことについて買い主に重大な過失(不注意)があった場合などには、やはり錯誤無効にはなりません(民法95条但書)。

家を売る場合には消費者契約法も問題になることがあります。消費者契約法では、消費者にとって不利益となる条項や契約が一定の場合に無効になると定められています。
消費者契約法が適用されるのは、相手が事業者の場合です。
たとえば、相手の業者が嘘を言ったり必要なことを隠して家を売却したりした場合には、その売買契約を取り消すことができます。
さらに、事業者に対して家を売却する際など、相手がどのような場合にも一切の返金に応じないなどの契約内容になっていたら、その条項が無効になる可能性が高いです。

以上のように、家の売買契約が成立する場合であっても、様々な原因で売買契約が無効になったり取り消されたりする可能性はあるので、そのようなトラブルが起こらないよう、充分に注意する必要があります。

(3)家に隠れた瑕疵があった場合の瑕疵担保責任

家を売る場合、その家に「隠れた瑕疵」があった場合の法律の規定についても理解しておく必要があります。
「隠れた瑕疵」というのは、「キズや問題」のことです。
たとえば、家自体に歪みがあったりドアの立て付けが悪くなっていたりなどの、物理的な「キズや問題」もありますし、建築基準法や都市計画法などで建築制限があるなどの、法律的な「キズや問題」もあります。

売却する家にこれらの隠れた瑕疵がある場合、一定の要件を満たす限り、買い主は保護されます。
そこでまず、具体的にどの程度のキズや問題があれば、「隠れた瑕疵」があると言えるのかを見てみましょう。これについては「通常一般想定されている性質」に足りない場合と考えられています。
家に何らかの欠陥がある場合だと考えると良いです。
家の場合、たとえば雨漏りがする家であったりシロアリが巣くっている家であったりすると、瑕疵があると認められます。

また、瑕疵は「隠れた」ものである必要があります。隠れた、というからには、買い主が瑕疵の存在を知らず、知らないことについても過失がないことが必要です。
家に瑕疵があっても、買い主がそのことを知っていたり、当然知っているべきであったりする場合には、そのような買い主は保護する必要がないという考え方です。
このように家に隠れた瑕疵がある場合には、買い主は売主に対して家の売買契約を解除することができますし、損害賠償をすることもできます(民法570条、566条)。

この瑕疵担保責任は、家を売った人が瑕疵の存在について気づいていなくても適用されます。
「立て付けが悪いとは知らなかった」などと言っても、損害賠償請求されてしまうおそれがあるということなので、充分注意が必要です。

また、瑕疵担保責任を追及して解除や損害賠償請求ができる期間については、民法において「瑕疵を知ったときから1年間」と規定されています。
以上のように、家を売った場合には、売り主が家に問題があることを知らなくても、その家に問題がある限り、買い主から家の売買契約を解除されたり瑕疵についての損害賠償請求をされたりする可能性があるということになります。
そこで、家を売却する場合、その家に問題がないかをしっかりチェックしておく必要があります。
ただ、この瑕疵担保責任については、売買契約時に特約によって免除してもらうことができますし、瑕疵担保責任の期間も自分達で定めることができます。

たとえば、瑕疵担保責任の適用をしないことにしたり、瑕疵担保責任の期間を3ヶ月間にしたりすることなどもできます。
ただし、売り主が事業者の場合には、瑕疵担保責任の免除や軽減について制限があります。まず、売り主が不動産会社(宅地建物取引業者)である場合、最低限2年以上の間、瑕疵担保責任を負うこととされているので、これより期間を短くすることはできません。

また、新築住宅の場合には、住宅の主要な部分(基礎や柱、屋根、外壁等)について、最低10年以上の間、瑕疵担保責任を負うことになっています。
さらに、売り主である不動産業者が倒産したりして瑕疵担保責任が履行されなくなることを防ぐため、不動産会社は保険に加入するか保証金を供託しなければならないとされています。
このことは、後に説明する宅地建物取引業法とも関連しますが、瑕疵担保責任については、買い主保護のため、売り主が事業者の場合に特則が設けられているので、特に自分が買い主となる場合にそなえて覚えておきましょう。

(4)境界トラブルがある場合の対処方法

家を売る際には、家の建物と土地を両方相手に売却することになります。
このとき、土地の部分について、隣地の人とトラブルが発生していることがあります。良くあるのが境界トラブルです。
境界トラブルとは、土地の境界がどこかということで隣地の所有者同士で意見が合わず、トラブルになってしまうことです。

境界トラブルが起こると、土地の境界線を確定できないので、そのままでは家を売却することができません。そもそも隣地との境目が明らかでなかったら、売却する土地の範囲がどこからどこまでなのかが特定できません。また、買い主の立場からしても、隣地の土地との境目すら明らかではない土地を購入すると、将来トラブルに巻き込まれることが目に見えており、購入したいとは思わないでしょう。
そこで、隣地の人と土地境界について意見が合わず境界トラブルになっている場合、まずは境界を特定しないといけないので、どのような方法で特定すべきかが問題になります。

この場合、土地の測量を実施して、境界を確定してもらう手続きが必要になります。
そのためには、土地の測量士を呼んできて、隣地の所有者双方の立ち会いのもとで土地の測量を行います。そして、法務局に備え付けてある土地の公図や過去の地積測量図などのあらゆる資料を参考にしながら、正しい土地の境界を特定していきます。

そして、土地の境界が特定できて当事者同士がその内容に納得したら、測量図面をつけた「境界確認書」を作成します。
この境界確認書に隣地の所有者双方が納得して署名押印ができたら境界がその内容で特定されて、境界トラブルを解決することができます。

ただ、土地の測量などを実施しても、当事者の双方や一方が納得できず、境界確認書にも署名押印せず、境界トラブルが解決できないことがあります。この場合には、法務局で「筆界特定制度」を利用することにより、境界トラブルを解決することができます。

筆界特定制度とは、法務局の登記官が関与して、土地の正しい境界を特定してくれる手続きのことです。
これを利用すると、法務局が調査をして土地の境界を決めてくれるので、とても助かりますし、時間も費用もさほどかからないメリットがあります。

筆界特定制度でもどうしても納得ができない場合、最終的に裁判をして筆界を特定してもらう必要があります。
この場合の裁判は「境界確定訴訟」です。ただし、境界確定訴訟をすると、1年以上かかることが普通ですし、弁護士や土地測量なども必要になって多額の費用がかかりますので、注意が必要です。
土地の境界問題で隣地の所有者ともめた場合には、なるべく早めに自分達で話し合って解決しておくべきです。
隣地の土地との間に境界問題があると、家を売れなくなってしまいますので、不安がある場合には、早めに隣地所有者と話し合って境界確認の手続きをしておきましょう。

(5)土地の取得時効が成立する場合

家を売る場合の隣地との境界問題に関して、土地の取得時効が問題になるケースがあります。
具体的に言うと、自分の家の敷地として、隣の土地の一部を長年使用し続けてきたような場合、その使ってきた部分について、取得時効によって自分の所有権の一部にすることができます。
家の取得時効が成立するまでの期間は、以下の2通りがあります。

  • 土地の占有(使用)を開始したときに、その土地が自分のものではないことを知らず、知らないことに不注意もなかった場合には10年間
  • 土地の占有(使用)を開始したとき、その土地が自分のものではないと知っていたり、知らないことに不注意があったりした場合には20年間

つまり、自分のものではないことを知っていたか知らなかったかによって、取得時効が成立する期間が異なり、知らなかった場合の方が短い期間で土地を取得できることになります。
ただし、土地の取得時効が成立するには、「所有の意思」をもって土地の利用をしてきたことが必要です。
たとえば、長年土地を使用してきたとしても、所有者との間で賃貸借契約をしていて、土地を借りた状態で使用してきた場合には「所有の意思」がないので、取得時効は認められません。そうではなく、自分が所有者であるかのように振る舞ってきた場合に取得時効が認められます。

また、取得時効が成立した場合、何もしなくても当然にその土地が自分のものになるわけではありません。
時効による土地取得を主張したいなら、相手(土地の所有者)に対して「時効の援用」をする必要があります。
時効の援用とは、「時効の利益を受けます」という意思表示のことです。

民法では、時効の利益を得ようとする者は、権利行使のためにその意思を明らかにしないといけないことになっているからです。
時効の援用をする場合には、確実に証拠を残す必要があるので、通常は「内容証明郵便」という郵便を利用して相手に通知書を送ります。
内容証明郵便とは、郵便局と差出人の手元に相手に送ったのと同じ内容の控えが残るタイプの郵便です。

これを利用すると、その日に相手に時効援用したことが後になっても証明できるので、確実に土地を時効取得することができます。
家を他人に売る場合でも、自分が長年隣地の土地を利用し続けてきて時効取得が成立する場合には、まずは時効の援用通知を送って時効取得したことを明らかにして、土地の境界をはっきりさせてから、相手に対して家を売る手続きをすると良いでしょう。

(6)自宅が袋地の場合、通行権はどうなるの?

家を売る場合、自宅が袋地のケースには通行権の問題があります。
袋地とは、自分の土地に行くために他人の土地を通らないといけない土地のことです。この場合、
その通らないといけない他人の土地に通行権を設定していることが普通です。
この土地の通行権のことを、袋地通行権とか囲繞地通行権と言います。

ところが、家を売るとなると、新しい所有者はその通行権を引き継ぐことができるのかが問題です。
袋地を売却する場合、それに附随している通行権も当然に一緒に売却することになりますので、買い主がその土地に入ることができなくなるなどといった状態にはなりません。袋地通行権について特に登記をしていなくても、これは当然に発生する権利なので、土地の売却と共に次の所有者に引き継ぐことができます。

ただ、袋地はとても不便な土地ですので、評価が低くなることが多いです。周囲の同じ大きさの土地と比べても、袋地と言うだけで評価は下がりますし、買い主を探すのもなかなか大変です。
袋地にある家を売る際には、これらの通行権や袋地の評価の問題があるので、充分注意する必要があります。

(7)自宅の土地に地役権が設定されている場合の取扱方法は?

袋地のケースとは反対に、自分の土地上に他人の通行権が設定されている場合の問題もあります。この他人の通行権のことを、「地役権」と言ったりします。
地役権が設定されている土地を他人に売却した場合、その地役権は消滅するのでしょうか?
この点、売却したからと言って地役権が消滅してしまうことはありません。

ただし、地役権の登記がない場合には、地役権の設定者は土地の買い主に対して、地役権の主張ができなくなることが基本です。
登記がある限りは地役権の設定者が保護されます。
つまり、地役権の登記がない場合、その土地を売ったら地役権の権利者は買い主に対して土地を使わせてほしいと言えなくなってしまうということです。
ただし、土地の外形上地役権の存在が明らかな場合などには、登記がなくても地役権の設定者が保護されて、地役権が認められるケースがあります。
このような問題があるので、土地上に地役権が設定されている場合、そのことを買い主に隠して売却すると、後に大きなトラブルが発生します。そうなると、瑕疵担保責任などを追及されるおそれもあります。
そこで、地役権が設定されている土地を売る際には、きちんとそのことも買い主に伝えて、地役権付きの土地であることを了承してもらった上で売却するようにしましょう。

(8)知っておきたい不動産登記法の知識

A、不動産登記法の目的と内容

次に、家の売却にかかわる法律として、不動産登記法についてご説明します。
不動産登記法とは、不動産の登記方法や手続きについて定められている法律です。
不動産登記をすることによって、不動産の所有者を明らかにして、取引におけるトラブルを防止することをも目的にしています。
不動産登記法では、いつどのような場合に、誰が不動産の登記申請をすることができるのかや、その場合の手続き要件などを定めています。
また、不動産登記申請をした場合に交付される権利証や登記事項証明書などについての規定もあります。
隣地の土地の筆界を特定するための筆界特定制度についても、不動産登記法で定められています。

B、不動産登記の重要性

家を売った場合、不動産の所有権移転登記をすることはとても重要です。
確かに不動産登記法においては、家を売って所有権を移転しても、必ずしも所有権移転登記をすることを要求していないので、家を売って所有権移転登記をせず、そのままにしておいても罰則などはありません。
しかし、家を売って所有権移転登記をしないと、売主が家を二重に売買することもできてしまいますし、固定資産税の納付書などももとの所有者の元に届いてしまいます。売主が家の所有者として扱われるので、土地トラブルが起こったときに、巻き込まれてしまうおそれもあります。
そこで、家を売ったら必ず所有権移転登記をすることが重要です。個人間の売買などの場合、登記をせずに放置することがありますが、そのようなことのないよう注意しましょう。

C、不動産登記の方法

家を売ったら所有権移転登記をする必要がありますが、その方法を解説します。
所有権移転登記は、その不動産を管轄する法務局で申請します。
このとき、登記申請書を作成して、必要書類を添付して提出すれば、基本的に手続きができます。
必要書類としては、家の売買契約書や登記識別情報(権利証)、印鑑証明書と住民票、不動産の固定資産評価証明書などが必要です。
また、不動産の評価額に応じて登録免許税も必要になります。
これらを揃えて提出すれば、自分でも所有権移転登記はできます。
ただし、手続きに不安があったり面倒であったりする場合には、司法書士に手続きを依頼する事ができます。その場合、5万円前後の費用がかかってくるので、費用対効果を考えて、自分で手続きするか司法書士に依頼するかを決めましょう。
なお、家を売る場合、通常は買い主が自分の負担と責任において所有権移転登記をするので、売却した側は登記に関してさほど神経質になる必要はありません。

(9)知っておきたい宅地建物取引法の知識

A、宅地建物取引業法の目的

家を売却するなら宅地建物取引業法(宅建業法)についても最低限知っておくべきなので、以下で簡単にご説明します。
宅地建物取引業法とは、宅地建物取引業の免許を受けた不動産業者に適用される法律です。業者と個人が取引する際などに、個人が不当に不利益を受けないため、業者の免許制度や業務規制、手続きや罰則などを定めています。
家を売る場合、相手が不動産業者なら宅地建物取引法が適用されて取引の方法などについての規制が及びますが、相手が個人の場合には宅地建物取引法の適用はなく、自己責任の度合いが高まるので、注意が必要です。

B、宅地建物取引法の内容

宅地建物取引法の内容を簡単に見ておきましょう。
宅地建物取引法では、不動産業者の免許制度が定められており、宅地建物取引業者(不動産業者)は、不動産業を行う場合に宅地建物取引業者の免許を取得して、登録をしないといけません。
そして、宅地建物取引業者になると、守秘義務や重要事項説明義務などの各種の義務が課せられます。
業務上知り得た顧客の情報などを他に漏らすことはできませんし、契約前には不動産についての重要なポイント(解除や損害賠償、手付や代金、不動産に設定されている権利関係など)を説明しないといけません。
さらに、売買契約成立後にも、書面を交付して物件の引き渡し時期や所有権移転登記申請時期などについて明らかにしないといけません。

不動産業者がこれらの宅建業法に定められた義務に違反した場合には、業務停止処分となったり免許を取り消されたり、罰金などの罰則が適用されたりします。
取引相手が宅建業者の場合、相手の瑕疵担保責任の期間も長くなりますし、保証金積立の制度もあります。
家を売る相手が業者の場合、このような宅建業法による規制があるので、最低限度の安心感があります。

2.法律による建築物の規制

(1)都市計画法による規制

家を売る場合、法律によって建築物の規制が行われているケースがあり、その場合家の評価に影響があったり買い主への説明などが必要になったりするので、注意が必要です。
建築物の規制をする法律として、まずは都市計画法があります。
都市計画法とは、都市の健全な発展を目的とする法律ですが、これによって都市区域がさまざまな種類に分類されます。

たとえば、「都市計画区域」や「準都市計画区域」に指定されたら、その中で建物を建てるために、建築主事や検査機関に建築確認をしてもらう必要があります。
また、都市計画法によって、不動産の用途に応じて用途地域に指定されたり、建物高度を制限する高度地域、防火構造について建築制限を受ける防火地域、準防火地域、緑化を目的とした緑化地域などに指定されたりすることがあります。
これらの特殊な地域に指定されると、その内容に応じて細かい建築制限を受けるので、家を売っても買い主は自由に建物を建てることができません。
そこで、都市計画法の建築制限を受けると、家の買い主を探すのが難しくなることがありますし、売値が一般の同じ土地の価格より安くなってしまうこともあります。
さらに、これらの建築規制について、買い主にきちんと説明をしないと瑕疵担保責任を追及されてしまうおそれもあるので、充分注意が必要です。

(2)建築基準法による規制

建物の建築方法については、建築基準法による建築制限もあります。
建築基準法は、建物の建築基準を定めることで、国民の安心や安全を守ることを目的とする法律です。

建築基準法で問題になりやすい制限として、2項道路があります。
建築基準法では、基本的に、都市計画区域では幅が4メートル以上の道路に面していないと建物を建てることができないとされています。
しかし、昔の家の場合には、それより狭い道路に面していることがあります。
そこでこの場合、原則として道路の中心線から2メートル以上後退することによって、建物の建築が可能になるという例外をもうけています(建築基準法42条2項)。
このような狭い道路のことを「2項道路」と言い、道路中心線から2メートル以上後退する義務のことを「セットバック義務」と呼ぶこともあります。

さらに、建築基準法では建物の防火対策との関係でも建築制限をしています。
具体的には、22条によって、都市計画法の防火地域や準防火地域の外側の一定の地域を定めており、その区域内で建物を建てるときには、屋根や外壁部分を不燃材料にしなければならないという規制があります。
この建築基準法によって防火規制を受ける区域のことを、「22条区域」と言います。

また、これらの建築規制とは別に、建築基準法によって、建物建築の幅が広げられていることもあります。
それは、建物が防火構造の場合です。具体的には防火地域や準防火地域内にある建築物であり、外壁が耐火構造になっている場合には、外壁を隣地の境界線に接することができるとされています(建築基準法65条)。
民法の原則では、隣の建物との間に50センチメートル以上の間を空ける必要があると規定されていますが(民法234条1項)、建物が上記の防火構造の場合には建築基準法が優先的に適用されるので、隣の建物に接して建築することができるのです。
このように、建築基準法は、建物の建築を制限する方向だけではなく、広げる方向の規定もしていることがあります。

これらの建築基準法による制限や規定が及ぶ場合には、家の売買に影響があります。
セットバック道路や22条区域の建築規制がかかってしまうと、自由に家を建てられないので、その分買い主を探しにくくなりますし、売値も通常より安くなることが普通です。
これに対し、65条の適用があって隣地と接して家を建てられる場合には、土地を広く利用することができるメリットがあるので比較的買い主を探しやすいですし、売値も強気で設定することができるでしょう。
家を売る際には、これらの建築基準法の適用についてもきっちり理解しておくと有利です。

3.まとめ

今回は、家を売る場合にかかわってくる法律を解説しました。
家を売る際に基本となる法律は民法です。
民法では、所有権が移転する時期や所有権を他人に主張する方法(登記)、売買契約が無効・取消になる場合や瑕疵担保責任などが定められています。まずは、これらの民法の規定をしっかり理解して、トラブルにならないよう適切に対応しましょう。
もっとも、民法の原則を変更する契約が多いので、しっかりと契約内容を確認することが重要です。

不動産に境界トラブルや時効取得の問題があったら、まずはそれらの問題を解決してから家を売る必要があります。また、家が袋地であったり地役権が設定されていたりする場合には、きちんと買い主に説明をして理解を得てから売ることで、トラブルを避けることができます。
家を売却したら速やかに不動産登記をしてもらうこと、不動産業者を介在させる場合には宅建業法が適用されることについても理解しておきましょう。
土地に都市計画法や建築基準法が適用されると建物に建築制限がかかって、買い主を見つけにくくなったり売値が低くなったりすることがあります。ただし、建築の幅が広がるケース(建築基準法65条)などには、売却の幅が広がるケースもあります。

以上のように、法的な知識を持っていると、家を売るときにトラブルを防止できますし、売却価格を不必要に値切られないなどのメリットがたくさんあります。
今回の記事を参考に、家の売買にかかわる法律について、最低限の知識を持っておくとよいでしょう。

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